不動産の名義変更(相続登記)の手続き
相続が起こった場合、被相続人名義の不動産登記簿を相続人名義に変える手続きをしなくてはなりません。
不動産名義を変更しないと、後々トラブルになることがありますので、できるだけ速やかに行ってください。
また、2024年には相続登記が義務化されることが決定されており、違反すると10万円以下の過料が課されるため、注意が必要です。
遺産相続したときの不動産の名義変更の流れ
遺産相続の場合の流れをご紹介いたします。
1.不動産についての必要な情報を集める
名義変更に必要な情報を集めましょう。
【固定資産納税通知書】
所有者の元に毎年届く書類です。手元にない場合は家のある市区町村の役場で代わりの資料として、公課証明書というものを発行してもらいましょう。
【登記済権利証】
家を取得したときに発行される書類です。再発行はできません。
【登記簿謄本】
不動産の登記事項が記載されている書類です。最新のものを、管轄の法務局で発行してもらいましょう。
2.戸籍関係の書類を集める
相続登記では被相続人(相続される人、相続の開始にあたっては亡くなった人)の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。
戸籍を取得する際は「役所にある戸籍をさかのぼれるだけ出してほしい」と伝えましょう。
婚姻や転籍した回数が多い方の場合だと、戸籍が10通以上にも及ぶ可能性があり、収集するだけでも非常に大変です。
3.遺言書の有無の確認
亡くなった方が、遺言書を遺していないかを確認しましょう。
遺言書の保管方法
① 自筆遺言を自宅に保存している(保管場所:自宅等)
② 公正証書遺言として遺している(保管場所:公証役場)
③ 自筆遺言を法務局に預けている(保管場所:法務局)
もし、自筆の遺言書が見つかっても、絶対に勝手に開封してはいけません。未開封のまま、家庭裁判所に提出し、遺言の検認をしてもらってください。
4.相続放棄の検討
遺産に借金がある場合や、相続したくない遺産がある場合、相続放棄を検討しましょう。
相続放棄は、相続が開始された事を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所を申し立てなければいけません。
5.遺産分割協議
遺言書がない場合、遺産分割協議を行います。
家を含む遺産を「誰が・どの遺産を・どのように」相続するかについて、相続人全員で話し合います。
6.相続登記に必要な書類を作成する
登記申請に必要な書類を収集、作成します。必要書類は、相続方法によって異なります。ご自身の相続方法に合わせて確認しましょう。
7.法務局への申請
必要書類が集まったら、管轄の法務局へ名義変更の申請をしましょう。
申請方法は、「窓口で申請する方法」「郵送で申請する方法」「オンラインで申請する方法」の3つです。
ご自身の都合に合わせて、申請をしましょう。
不動産の名義変更に必要な書類
亡くなられた方(被相続人)の書類
① 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等 ※
相続人を確定するために必要です。
また、被相続人の記載のある戸籍謄本は1通ではありません。原則、生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本を集めなければなりません。
また、転籍や婚姻などをされている場合、転籍前や婚姻前の本籍地所在地の市区町村で、除籍謄本や改正原戸籍を取得しなければなりません。
一般の方でも取得できますが、何回も転籍されているような場合や遠方の市区町村に請求しなければならない場合、手続きはかなり煩雑になります。
② 住民票の除票の写しまたは、戸籍の附票の除票 ※
被相続人を住所と氏名及び本籍地で特定するためです。
相続人の書類
① 法定相続人全員の戸籍謄本 ※
相続人であること及び現在も生存していることを証明するためです。
② 遺産分割協議書 ※
法律で定められた相続分以外の割合で相続する場合に必要です。
③ 法定相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書に添付します。
④ 相続財産をもらい受ける相続人の住民票の写し ※
登記簿に不動産の所有者として記載される方の住所を特定するためです。
⑤ 相続する不動産の固定資産評価証明書(一番新しい年度のもの) ※
相続登記にかかる登録免許税を計算するためです。
⑥ 相続する物件の登記事項証明書 ※
相続登記申請の前に、不動産を特定したり、被相続人名義の不動産かどうかを確かめたりするためです。
(上記の書類以外にも書類が必要な場合があります)
これらの書類をすべて集めるのは相当な労力を要します。
また、戸籍謄本等の収集などにおいて少しでも不備があると、もう一度やり直す必要が出てきます。
名義変更をしないとどんなデメリットがある?
家の所有権を第三者に証明することができない
名義変更を行わない場合の一番のデメリットは、家の所有権を第三者に証明(主張)できないことです。
名義変更の登記をしないと、第三者に不動産の所有者だと認めてもらえないので、不動産を売却したり、不動産を担保に銀行融資を受けたりすることができません。
権利関係が複雑になる
名義変更の登記をしないまま所有者が死亡した場合、相続人が関係者にはいってくるので、いざ、相続となった際に、相続人が大人数になり、話し合いが一向にまとまらなくなってしまう可能性があるのです。
早めに名義変更をしておくことをおすすめします。
相続人が認知症などで遺産分割協議が難航する
相続人の一部が高齢になり、認知症などになって判断能力が低下した場合、遺産分割協議に参加してもらうことができなくなります。
例えば、亡くなった父の家を、長男が引き継いだものの、名義変更をしないまま父名義のままにしていたが、数年後に売却などによって、名義変更が必要になった場合などがあてはまります。
不動産の権利を失うリスクがある
遺産分割協議で話し合い、家を相続したとしても、名義変更をしていなければ所有権を失ってしまう可能性があります。
遺産分割で家を単独取得する場合でも、早期に相続登記しないと、相続持ち分(法律で決められた遺産の取得分)を他の人に売却され、登記されてしまう恐れがあります。
このようなケースを二重譲渡といいますが、判例上、最初に登記をした人が不動産の権利を取得することができるとされています。
固定資産税を支払う義務はある
登記名義を変更せずに放置していたとしても、固定資産税を支払い続ける義務はあります。
また、所有者が明確でない間、市区町村が固定資産税の請求先が分からず、請求がこないままとなっているケースもあります。その場合は、未払いとなっている分が一括で請求される可能性があるので注意が必要です。
相続登記の義務化により罰則が付く(2024年4月から)
2024年4月1日より、相続登記が義務化されることが決まりました。
義務化のルールは下記の2つです。
・相続から3年以内に相続登記をしなければならない
・相続登記を放置すると、10万円以下の罰則が科される
罰則がつくことが決まりましたので、相続した不動産の名義変更は早めに済ませておく方が良いでしょう。
この記事を担当した税理士
- 税理士法人浜村会計 代表税理士 浜村美香
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保有資格 税理士 専門分野 相続業務
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